構造変更の分類

 

最近では構造変更も一般的になってきており、不正改造では無く、正規の手続きを踏んで自動車の改造やチューニング等を行っている方には、もはや特種な言葉では無いかと思います。

様々なサイトでもご紹介されておりますので、各部の詳細な構造変更に該当する定義などは別項で紹介するとし、ここでは簡単におさらい程度の説明とさせていただきます。

 

まず、車の構造体を大きく分けて10箇所の項目とします。

 

1. 車枠及び車体

これは、言うまでもなくフレームやボディーのこととなりますが、一重にフレームと言いましても、モノコックフレームもあればラダーフレームやバックボーンフレーム等様々な形状が存在します。

ただ、主目的としてフレームを改造されるというケースよりも、例えば車高を下げた際にホーシングがフレームと干渉するため、そのフレーム部分に逃げ加工を施した(キックダウン加工と一般に言われておりますが、C-ノッチや、C-セクションなども これに該当します)とか、荷台を延長した際に、ホイールベースの延長が必要となり、それに合わせてフレームの中間を延長した場合など、何かの改造を施した際の二次的な改造として手を加えられるケースが多いのでは無いでしょうか?

モノコック車の場合その昔は、後付社外サンルーフの取付や、外板を切断してオーバーフェンダーを装着した場合なども、構造変更に該当しておりましたが、最近ではモノコックの主骨格に直径250mm以上の開口を設けて、その周囲を補強しないものなどが対象となっております。

また、自動二輪車(この場合250cc以上の車検を有する自動二輪車に限定させていただき話を進めます)などでは、フロントフォークの角度(トレール角)の変更のために、メインフレームやダウンチューブの一部を延長又は短縮したものなども、この改造に該当します。

また、自動二輪車から、サイドカー(側車側にフレームの新設)やトライク(車体の形状の変更)などに変更した場合もこの部分の改造に該当します。

 

2. 原動機

これは、エンジンを載せ替えたものや、排気量の変更を行ったものなどが該当します。

誤解を恐れずに申し上げますと、排気ガスの基準が年を追うごとに厳しくなる方向へ推移しておりますので、年式の古いエンジンから新しいエンジンに載せ替えるケースは比較的容易(排ガス浄化装置もそのまま移設の場合)ですが、逆の場合は排気ガスの試験(通称ガスレポと言われるものです)が必要になるケースがほとんどです。

また、ボアアップなどによって排気量が変更となる場合も、正式にはこちらの改造に該当しますが、ボアアップだけであれば排気ガスもダーティーになりづらく、外から見てもわからないため、構造変更検査を行わず、そのままの状態で走行しているユーザー様も居るようですが、厳密に申し上げますと、この場合違法改造車となってしまいます。

実際書類を持って申請をする際に於いても、確認のしようが無いため、これからそのような改造を行うユーザー様にあっては、拓本を採ったり、ノギスなどを当てたピストンの写真を撮るなりをしておいたほうが、後々スムーズにことが進むと思います。

小型車や普通車の場合、現在改造の取り扱いを行っているのは、後でも詳しく説明いたしますが、運輸支局では無く 自動車検査独立行政法人というところで行っているのですが、残念なことに各地方ごとに微妙に解釈が異なっており、審査基準がはっきりと統一されておりませんので、どのような状況となっても対応できるように、二重三重に様々なデータを収集してお枯れることをお勧めいたします。

 

3. 動力伝達装置

動力伝達装置とは、原動機以降、後述の走行装置の一部までの部分に改造を施した場合、この部分の強度検討書が必要となってきます。

具体的には、FR車や4WD車のプロペラシャフトの変更を行った場合、ドライブシャフトの変更を行った場合、トランスミッションの型式の変更を行った場合、駆動軸数や駆動方式の変更を行った場合などがこれに該当します。

プロペラシャフトやドライブシャフトの変更に関しては、特に説明は不要かと思いますので割愛させていただくこととし、トランスミッションの場合、同じミッションケース内のギア比の変更(クロスミッションの装着など)や4速ミッションから同型式の5速ミッションに変更する場合などは、構造変更の適用となりません。

AT車をMT車に変更した場合や、原動機の載せ替えに伴いトランスミッションを変更した場合などが、この構造変更に該当します。

これに合わせて強化クラッチディスク/カバーなどに変更した場合、強度検討書は不要ですが、その操作方式を機械式(ワイヤーやロッド式)から油圧式に変更など、操作方法を変更した場合は構造変更の適用となります。

駆動軸数の変更はFF車を4WD車にした場合やその逆の場合などの他、駆動軸を二軸にする改造を行った場合などがこれに該当し、また駆動方式の変更というのはプロペラシャフトを取り外しチェーン駆動としたケースや、自動二輪車などにおいてベルトドライブからチェーンドライブへ変更した場合などがこれにあたります。

 

4. 走行装置

走行装置の改造とは、軽トラックなどで見られるようなタイヤからキャタピラに変更されたものや、スノーモービルの前軸のようにそりに変更されたもの等の他、フロントアクスルやリアアクスルの変更・追加・新設したもの、また重複しますが軸数の変更を行った場合などが該当します。

例えば後軸を一軸から二軸に追加変更した場合、追加した車軸が駆動するようであれば、3の動力伝達装置+走行装置 の2項目について強度検討書が必要となり、追加変更した車軸が駆動しないのであれば、走行装置の強度検討書のみの提出で良いということです。

勿論他に構造変更に該当する部分があれば、その部分の強度検討書は必要となります。

 

5. 操縦装置

操縦装置については、ハンドル位置を右ハンドルから左ハンドルヘ変更した場合や、操舵軸数(ハンドルの切れる軸の数)を変更する場合、リンク装置の取付位置の変更を行う場合や、操作方式の変更を行う場合、構造変更に該当します。

右ハンドルから左ハンドルというのは、そのまま字の通りで、操舵軸数の変更というのは前軸操舵の車輌に操舵装置を有する前軸を追加した場合のほか、メジャーな所ではハイキャスキャンセラーの装着などもこの操舵装置の改造に該当します。

またリンク装置の取付位置の変更とは、リフトアップした4WD車などにおいてステアリングリンケージの構造を変更した場合などを言いますが、現在ドラッグリンクを延長されたものに交換した場合などは、構造変更の適用外となります。

この場合ステアリングリンケージの位置を下げるために追加でロッドを取り付けて配置が標準車と異なるものになった場合のほか、4WD車に限らずステアリングギアボックスをリサー旧レーティングボール式からラックアンドピニオン式に変更した場合なども該当し、更にステアリングによる操作からレバー式への変更や足踏み式への変更なども該当します。

同じステアリングによる操作方式だったとしても、油圧シリンダー等によって操舵する方式へ変更した場合などは、ギアボックスの変更と同じく操舵システム自体の変更となるため、同様に構造変更の適用となります。

自動二輪車などでは、側車付二輪自動車へと変更した際に、アールズフォークへ変更した場合などは、この部分の適用となります。

 

6. 制動装置

制動装置の変更とは、ドラムブレーキからディスクブレーキへの変更など制動方式を変更した場合などの他、同じドラムブレーキ形状であっても、内部拡張式(車輌に使用される一般的なドラムブレーキ)から、外部収縮式(自転車などに使用されるライニングがドラムの外側に配置される形状のもの〉に交換された場合なども、構造変更の適用となります。

また、その伝達方式においても、今ではあまり見られませんが、ワイヤー式のブレーキから油圧式に変更した場合や、エア式やエアオーバー式に変更した場合なども構造変更の適用となります。

上記のケース以外で、ディスクブレーキの大径ディスクブレーキへの変更や2ポッドキャリパーから4ポッドキャリーパーへの変更や、ドラムブレーキの大径化、マスターシリンダーの大径化、ブレーキホースをメッシュホースへ変更した場合などは構造変更の適用外となります。

 

7. 緩衝装置

私の個人的な見解では、おそらく一番メジャーな構造変更では無いかと思うのが、この緩衝装置では無いでしょうか。

現在使用しているスプリング(各車軸ごと)で、異なる形式のスプリングに変更した場合や、リジットアクスルから独立懸架に変更など懸架装置の形状自体を変更したもの、などがこれに該当します。

各車軸ごとというのは、前軸がトーションバーで後軸がコイルスプリングの車輌だったとした場合、前軸 トーションバー ⇒ 社外トーションバー  後軸 コイルスプリング ⇒ 社外車高調整式コイルスプリング の場合は構造変更に該当しませんが、前軸に例えばコイルスプリングを装着してしまうと、標準車の前軸スプリング形状と異なるため、構造変更に適用となるということです。

また、懸架装置の形状自体を変更した場合というのは、非常に間違って理解されやすいのですが、懸架装置の形状の変更だけにとどまらず、サスペンションアームの変更を行った場合(延長ロワーアーム等)や、それらアームやロッドを取付けるためのブラケットの変更を行った場合、またリーフスプリングに於いては、社外のスプリングへの交換やシャックルの変更も構造変更に該当します。

但し、ノーマルのスプリングに純正、社外を問わず増しリーフをするのは構造変更には該当しません。

リーフスプリングを除くその他のスプリングにあっては、標準車のスプリングと入れ替える形で装着される場合に限り、コイルからコイル、エアからエア、トーションバーからトーションバーであれば社外品への交換も構造変更の適用外となりますが、取付位置の変更があったり、足廻りリンクの変更、移動等がある場合は構造変更の適用となります。

自動二輪車の後輪においては、同形状のスプリングであっても取付位置が異なる場合は、フレーム側にあっては車枠強度の検討が必要になったり、スイングアーム側にあってはスイングアームの強度検討が必要になる場合もあります。

自動二輪車の前輪において、トレール角が変更になった場合かかる応力が変わってくるため、本来であれば強度検討が必要かと思うのですが、現在のところトレール角の変更によるフロントスプリングの強度検討は請求されておりません。

 

8. 連結装置

連結装置は被けん引車をけん引するための連結装置を新規に装着、あるいは形状の変更を行った場合に該当となります。

該当する被けん引車は、基本的には3.5t以上の主ブレーキと連動して作動するブレーキを有するものであるため、このような改造を行っている業者様では、当社の解説などを見るまでも無く申請を行っていると思いますので、簡単な説明で終わらせていただきます。

連結装置には、第五輪式(通常のセミトレーラ等)のほか、ピントルフック式(コンテナなどのフルトレーラのほかポールトレーラ等)、ベルマウス式、ヒッチボール式等の連結部分を、それぞれ新設、形状やサイズの変更をした場合に必要となります。

国内で一般的な3.5t以下のトレーラーにあっては、市販のクラスⅣのヒッチメンバーで対応できるため、自作のヒッチメンバーなど以外ではあまり計算されることがありません。

こちらのサイトでは、組立申請のページにて詳しく解説しております。

 

9. 燃料装置

燃料装置は ガソリン車 ⇔ 軽油車 ⇔ LPG車 ⇔ CNG車 ⇔ メタノール車 ⇔ ハイブリッド等 に変更した場合必要となるもので、通常は強度計算や強度検討という類のものでは無く、配管図などを添付して申請します。

EGRバルブ等排気ガス浄化装置の配管図も必要となります。

 

10. 電気装置

こちらは最近の必要性に迫られて追加された項目で、充電設備の変更や電池の種類の変更のほか、電池の取付位置を変更した場合においても、構造変更の適用となります。

よくある改造例の内燃機関のエンジンから、モーターに換装して電気自動車化した場合などは、上記の全ての部分が新設となるため、この部分の検討書が必要となります。

こちらも、スロットルから始まり、モーターに至るまでのコントロールユニット等を含む配線図や制御内容、充電方式に至るまでの配線図等を提出するような申請となります。

電池の取付位置を変更した改造にあっては、通常前後の重量に変更があった時に提出される「荷重分布計算書」という計算書を提出するので、その前軸、後軸の重量測定等は必要となってきます。

 

 

これら10箇所の部位に分けて改造に該当するかどうかを判断することとなりますが、構造変更検査自体は、上記改造に該当しないものにも該当するケースがあります。

それは、上記の改造に該当しない改造(指定部品等の装着により)で、車輌の寸法が変更となった場合や重量が変更となった場合、また定員の変更やよく行われる 乗用 ⇒ 貨物 などへの変更の場合です。

こう言った場合も構造変更検査とはなりますが、その昔は「記載変更」と言って車検証に記載されている内容を変更するだけの検査でしたが、現在は「記載変更」というものが無くなり、全て構造変更に統一されてしまったため、このような構造変更も存在します。

上記10ケースの改造に該当し、強度検討書等を提出した改造に於いては、型式が設定されている車輌に関して、車検証の型式の後部に「改」の文字が入り、車検証備考欄にその改造を施した部位の名称が、「改造内容 動力伝達装置」などといった具合に記載されます。

それ以外の改造で構造変更検査となった場合は、国産乗用車などの場合ですと類別区分番号や型式指定番号が車検証の備考欄に記載されることとなります。

構造変更申請をして車検証が交付されますと、たとえ元の型式が同じ車であっても別の車と判断されることとなりますので、例えば400ccのバイクに600ccのエンジンを載せて構造変更を行った場合、中型免許で運転することはできませんので、免許に限定等がある場合は注意が必要です。

このように構造変更と一口に言っても、簡単なものから複雑なものまで様々な種類があるため、初めての方は頭が混同してしまうのかもしれません。

 

 

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